解体という仕事 ― 一頭を、余さずいただく
前回、「止め刺しと血抜き」について書きました。今日はその続き――血を抜いたイノシシを、どう「いただく形」にしていくか。解体の現場の話です。
時間との勝負
血抜きを終えたイノシシは、すぐに解体にかかります。ここからは、時間との勝負です。手早く、そして丁寧に。おいしい肉にするためにも、命を無駄にしないためにも、間を置かずに進めていきます。
まずは、皮をはぐ
最初の作業は、皮をはぐこと。
足首に切り目を入れ、そこから少しずつ、皮をはいでいきます。
ここで、一つ注意があります。野生のイノシシには、マダニがついていることが多いのです。刺されると厄介な虫ですから、皮をはぐときは、細心の注意を払います。自然の中で生きてきた獣を扱う、ということの現実です。
そしてもう一つ、おいしさのコツを。背中の皮をはぐときは、脂を皮のほうに取りすぎず、肉のほうに残しておく。この脂こそが、イノシシ肉の旨みの source(源)になるのです。
内臓を、出す
皮をはいだら、次は内臓を取り出します。
ここでいちばん気をつけるのは、膀胱や腸を傷つけないこと。もしこれらを破ってしまえば、中身が肉に触れ、臭みや汚れの原因になってしまいます。慎重に、ていねいに。集中の要る工程です。
部位ごとに、切り分ける
皮をはぎ、内臓を抜いたら、いよいよ部位ごとに切り分けていきます。
背ロース、バラ、モモ、カタ、スペアリブ、ネック――。一頭のイノシシから、さまざまな部位がとれます。
そして、それぞれに違ううまみがある。脂ののったバラ、しっかりした赤身のモモ、極上のスペアリブ……。どこがいちばん好きかは、人によって分かれるところ。そんな話をしながらの解体は、大変ながらも、どこか豊かな時間です。
一頭のイノシシを、皮から内臓、そして一つひとつの部位まで、余すことなく分けていく。その手を動かしながら、命の大切さを、あらためて実感します。
畑を守るために、いただいた命。だからこそ、無駄なく、おいしく、ありがたくいただきたい。それが、この一頭にできる、精いっぱいのことだと思うのです。ゼロの番人として、これからも、その一頭いっとうと、まっすぐ向き合っていきます。
ZEROSPHERE / ゼロの番人