かかった、けれど ― 命と向き合う夏の現場
「かかった」の一報
「イノシシがかかった」——その一報を受けて、私たちは現場へ向かいました。
軽トラに道具を積み込み、山あいの道を走る。以前くくりわなの見回りと取り込みで書いたとおり、わなにかかったイノシシは、放置すれば弱ってしまう。だから、知らせを受けたら、すぐに動く。これが鉄則です。
竹やぶの中の獣道。そこに仕掛けた、くくりわな。今日はそこに、一頭のイノシシがかかっていました。
突進は、来なかった
わなにかかったイノシシは、人間めがけて猛進してくる——前にそう書きました。だから今回も、身構えて近づきました。
ところが——イノシシは、かなり弱っていました。
原因は、おそらくこの暑さです。連日の猛暑。わなにかかって身動きが取れないまま、夏の日差しにさらされ、体力を奪われていたのでしょう。もっと激しく暴れ、突進してくるかと思っていました。でも、その力は、もう残っていなかった。
正直に言えば——見どころなく、捕獲は終わりました。
拍子抜けと、複雑な思い
「無事に捕れてよかった」。それは間違いありません。危険な突進もなく、安全に作業を終えられたのですから。
でも、同時に、少し複雑な気持ちも残ります。あれほど手強いはずのイノシシが、暑さで弱りきっている。その姿は、自然の厳しさを、静かに突きつけてきます。人間だけでなく、山の獣たちにとっても、この夏の暑さは過酷なのだと——現場に立つと、そう実感します。
命を、いただく
弱っていたとはいえ、これも一つの命です。畑と暮らしを守るために捕らえた命。きちんと血を抜き、ていねいにさばいて、余さずいただく。それが、その命への、いちばんの敬意です。
派手な"武勇伝"のような日ばかりではありません。むしろ、こういう淡々とした一日の積み重ねが、狩猟の日常です。突進があってもなくても、一頭いっとうと、まっすぐ向き合う。それが、ゼロの番人としての務めだと思っています。
猛暑の夏。人も、獣も、それぞれに命がけです。
ZEROSPHERE / ゼロの番人