金箔と霜降り牛、そして後がけスープ ― 一心の10周年記念
前回の記事で、「本日は麺や一心の十周年記念日」と書きました。今日はその続報です。この日だけの、当日限りの限定ラーメン――それは、私の想像をはるかに超える、まさに"事件"でした。
スープのない、ラーメン

席に届いた一杯を見て、まず驚きました。スープが、ないのです。
器の真ん中には、鮮やかな霜降り牛肉。そこに、金箔がちりばめられている。まだ食べてもいないのに、ただならぬ雰囲気が漂っています。「これは、普通のラーメンじゃない」と、背筋が伸びました。
目の前で、完成する

しばらく待つと、スタッフさんが、別に用意されたスープを運んできました。それを、器にそそぐ。そして蓋をして、「十秒ほど蒸らして、お召し上がりください」と。
言われたとおり、じっと待つ。蓋を開けた瞬間――思わず声が出ました。生だった霜降り肉が、注がれたスープの熱で、ちょうどミディアムレアに火が入り、とろりと、なんともおいしそうな状態に変わっているのです。目の前で、一杯が"完成"していく。もう、演出からして規格外でした。
体に染み渡る、うまみ
まずは、スープをひと口。
塩ベースのそのスープは、熊本県産の「天草大王」という鶏と、愛媛県産の真鯛。その二つの、凝縮された旨みが、すっと体に染み渡っていきます。
麺は、ストレート麺。スープとよく絡み、一口すすった瞬間、「ああ、これぞ一心だ」と、しみじみ思いました。
とにかく、贅沢
このラーメン、なにより具が豊富で、贅沢なのです。
霜降り牛肉に、ほろほろに崩れる豚チャーシュー。大粒のホタテ、揚げ煮卵、ネギ。そして、途中で味を変えられるスダチまで。
これでもかと盛られた具のおかげで、ひと口ごとに違う表情が楽しめる。飽きるどころか、最後の一滴、最後の一片まで、夢中でいただきました。
値段は、あなたが決める
そして、いちばん驚いたのが、その値段です。
なんとこのラーメン、決まった金額がありません。「このラーメンに、あなたが払いたいと思う金額を、壺に入れてください」――お店ではなく、お客が値段を決める。そんな、画期的なシステムだったのです。
十年の感謝を、こういう形で表現する。粋だと思いました。ちなみに私がいくら入れたかは……ここだけの秘密にしておきます。
5時間待ちの、行列

一心は、普段から行列の絶えない店です。けれど、この日はいつもの比ではありませんでした。
道路を挟んだ反対側にまで、人の列。聞けば、五時間以上待った人もいたそうです。しかも、この限定ラーメンは百五十食限り。並んでも、ありつけなかった人もいたかもしれません。それだけの熱狂が、この小さな町の、一軒のラーメン屋に集まったのです。
一杯のラーメンに、これだけの人が並び、これだけの物語が生まれる。町にただ一軒の店が、十年でここまでの存在になった。地元の一人として、心から誇らしく、そしてうれしい一日でした。

麺や一心、十周年、本当におめでとうございます。ゼロの番人として、これからもこの店の歩みを、見守り続けていきます。
ZEROSPHERE / ゼロの番人