呉服店が、絹のお菓子屋になった ― スイーツ工房絹
看板は、そのまま「呉服 進藤」

野村の町を歩いていると、思わず足を止める建物があります。風格のある木造の店構え。軒には瓦がのり、太い一枚板に「呉服 京都 進藤」の文字。どう見ても、老舗の呉服店です。
けれど、ここは今——お菓子屋さんです。その名も、スイーツ工房 絹(きぬ)。
絹織物を売っていた店が、「絹」という名のお菓子屋になった。 そう聞いただけで、もう物語が始まっています。
「シルクとミルクのまち」から
かつて野村は、「シルクとミルクのまち」と呼ばれていました。伊予生糸で知られる養蚕と、酪農。二つの白い恵みが、この町を支えていたのです。
けれど時代とともに、町は少しずつ元気を失っていきました。呉服店という家業の場所を前に、店主は考えます。この場所で、この町を、もう一度元気にできないだろうか——。
そうして選んだのが、お菓子でした。お菓子で人を幸せにしたい、感動を届けたい。その思いが、この建物に新しい命を吹き込みました。
一歩なかへ入ると、格子の建具や梁はそのままに、明るく心地よい空間に生まれ変わっています。古いものを壊さず、活かす。その姿勢が、店全体からじんわり伝わってきます。
地元の農家から、直接
スイーツ工房絹のもう一つの芯は、素材です。
信頼できる地元の農家さんから、直接仕入れる。いちご、ブルーベリー、かぼちゃ、お茶、はちみつ——地元産のフルーツ・野菜・乳製品にこだわります。「シルクとミルクのまち」の店らしく、この土地の恵みで、この土地のお菓子をつくる。

レモンの効いたチーズタルト、ピスタチオをのせた鮮やかなマカロン。どれも丁寧で、そして華やかです。オーダーケーキも受けてくれます。
看板商品は「きぬろーる」
そして、いちばんのおすすめが——その名も「きぬろーる」。
- 甘さ控えめの、シルク入りクリーム
- それを、野村産の桑の葉パウダーを練り込んだうぐいす色のスポンジでくるむ
- アクセントに、黄色いみかんのガナッシュ
切り口を見てください。桑の葉のやわらかな緑、白いシルククリーム、そこに散る黄色のみかん。まるで、この町の風景をそのまま巻き込んだような一本です。絹と、桑と、柑橘。野村と愛媛が、ひと切れに収まっています。
お店の情報

- 住所:〒797-1212 愛媛県西予市野村町野村14-10
- 営業時間:12:00〜19:00(カフェは17:00まで)
- 定休日:毎週月曜日、第1・第3日曜日
野村へお越しの際は、ぜひあの「進藤」の看板を探してみてください。絹の町の物語が、甘い形で続いている場所です。
ZEROSPHERE / ゼロの番人