蔟に、のぼる ― 初秋養蚕17日目、上蔟作業
17日目、いよいよ上蔟
8月31日、初秋養蚕17日目。
いよいよ——上蔟(じょうぞく)です。
5齢の食べ盛りが一週間続き、蚕たちの体は充分に育ちました。ここからは、繭をつくる場所へ移してやる作業。養蚕のなかで、最も大きな山場です。
まずは、熟蚕を見極めて

上蔟のタイミングは、蚕が熟蚕(じゅくさん)になったかどうかで決まります。
熟蚕の見分け方は——桑を食べるのをやめ、体が透きとおって飴色になり、頭を持ち上げて糸を吐く場所を探しはじめる。そうなったら、繭をつくる準備が整った合図です。
はじめは、一頭ずつ熟蚕を見極めて、蔟に移していきました。熟した蚕を蚕座に置いたままでは、桑の上で糸を吐きはじめてしまう。
だから、選ぶ。見て、選んで、移す。
やがて「総拾い」へ

ところが——時間が経つにつれ、次々と熟蚕になっていきました。
そこで、「総拾い(そうびろい)」に切り替えました。
総拾いとは、その名のとおり、残っている蚕をまとめて全部拾い上げて蔟に移すこと。館長が「成長がそろっている」と言ってくださったのは、まさにこのためです。バラバラなら何度も分けて作業しなければならないところ、一度で済む。 作業効率がまるで違います。
写真のとおり、この日はみんなで手分けしての作業になりました。拾って、移して、また拾って。
回転蔟に、のぼっていく
移し先は、回転蔟(かいてんまぶし)です。

木枠を格子状に組んだもので、一つひとつのマスが、蚕の個室になります。天井から吊るされ、蚕の重みで自然に回転する仕組み。蚕は上へ上へと登る性質があるので、空いているマスへと自分で移動していくのです。
写真をご覧ください。宙に浮かぶように吊られた蔟の群れ。そのマス目に、白い蚕たちがおさまっています。この光景は、養蚕でしか見られません。
なお蚕糸マニュアルによれば、1組1,560穴の蔟に対し、1,000〜1,200頭(約5kg)に抑えるのが適正だそうです。詰め込みすぎると、二頭で一つの繭をつくる「玉繭」ができてしまい、糸の質が落ちます。
あとは、蚕にまかせる
上蔟作業が終わると——ひと段落です。
8月15日に配蚕された蚕たちと、17日間。毎朝5時30分の採桑、一日3回の給桑、眠の見極め、網入れ、桑畑を変えた日、株を守る伐り方……。
蚕たちが自分で糸を吐き、自分の繭をつくる。それを静かに待つだけです。蔟の中を清潔に保ち、温度と湿度に気を配りながら、邪魔をしないことが唯一の仕事になります。
あとは、蚕たちががんばって繭を作ってくれることを願うばかりです。
数日後、この蔟のマス目が、真っ白な繭で埋まっている——そんな光景を見られる日が、楽しみでなりません。
ZEROSPHERE / ゼロの番人