地域づくりを「人」から「組織」へ――NPO法人シルミルのむら
地域づくりを「人」から「組織」へ――NPO法人シルミルのむら
地域づくりの活動は、熱意のある誰か一人の力に支えられていることが少なくありません。
地域のために動く人がいる。周囲の人が協力する。そして、さまざまな活動が生まれていく。
それ自体は素晴らしいことです。しかし、その人が動けなくなると、活動まで止まってしまうことがあります。地域づくりを長く続けていくためには、個人の熱意を大切にしながらも、それを「組織の力」に変えていく必要があります。
西予市野村町で、その一つの形をつくりつつあるのが、NPO法人シルミルのむらです。
のむら自治振から生まれたNPO法人
野村地区では、2011年に野村地域自治振興協議会、通称「のむら自治振」が発足しました。
住民が主体となって地域づくりを進める中で、活動を一時的なものに終わらせず、持続可能な事業として続けていくため、2017年5月にNPO法人シルミルのむらが設立されました。
最初から地域づくりの表舞台に立っていたわけではありません。
地域おこし協力隊の活動支援、乙亥会館を拠点としたコミュニティカフェやビジターセンターの運営、耕作放棄地の管理、観光振興など、地域で活動する人たちを支える「縁の下の力持ち」としてスタートしました。
地域に必要なことを見つけ、自分たちだけで目立とうとするのではなく、活動する人と人をつなぎ、裏側から支える。それが、シルミルのむらの原点だったのだと思います。
人口が多いことを、地域の力に変える
野村地区は、西予市内のほかの地区と比べても人口の多い地域です。
人が多ければ、それだけ考え方や立場も多様になります。そのため、地域全体が一つにまとまって動くことが難しいという面もありました。
しかし、見方を変えれば、人口が多いということは、それだけ多くの知識、経験、技術、そして行動力が地域にあるということです。
料理が得意な人、子どもと関わる人、地域の歴史に詳しい人、イベントを企画する人、情報発信ができる人。人の多さを「まとまりにくさ」と捉えるのではなく、地域のマンパワーとして生かすことができれば、大きな力になります。
その力を集め、つなぎ、活動へ変えているのが、シルミルのむらです。
地域づくりの中心を担う存在へ
シルミルのむらは、協力隊支援やコミュニティカフェの運営などから始まり、西日本豪雨後の災害支援、交流事業、乙亥大相撲に関する取り組み、子どもたちの活動、地域食堂などへ活動を広げてきました。
2022年からは、野村地域の地域任用職員業務を受託し、のむら自治振の事務局を担うようになりました。2023年に野村地域づくり活動センターが開設されてからは、地域づくりを支えるだけでなく、その中心を担う存在になっています。
現在は、地域食堂「おかえり食堂」、放課後子ども教室「N-ジオチャレ」、花を通じた環境美化、イルミネーション、地域行事など、多様な活動に取り組んでいます。
単にイベントを開く団体ではありません。
地域の声を拾い、住民や団体、学校、行政などをつなぎ、実際の活動として形にする。シルミルのむらは、野村の地域づくりを動かす中間支援組織のような役割を果たしています。
「誰かが頑張る」から「組織で続ける」へ

地域づくりは、ともすれば属人的になりがちです。
「あの人がいるからできる」
「あの人が全部やってくれる」
その状態では、一時的に大きな成果を上げることはできても、長く続けることは難しくなります。
シルミルのむらの素晴らしいところは、特定の一人だけに頼るのではなく、理事や職員、地域住民、ボランティアなどが関わり、組織として活動を続けていることです。
それぞれが得意なことを持ち寄り、役割を分担し、地域の課題に向き合う。これまで裏方として積み重ねてきた経験が、現在の組織的な活動につながっています。
西予市内の地域づくり団体の中でも、持続可能な地域運営に向けた先進的な動きをしている団体の一つだと、私は感じています。
「シル」と「ミル」に込められた思い

「シルミルのむら」という名前には、野村らしい意味が込められています。
一つは、野村を代表する産業である「シルク」と「ミルク」。
二つ目は、地域のことを「知る」「見る」。
そして三つ目は、野村を訪れる人に、この地域の魅力を「知って」「見てもらう」ことです。
野村で育まれてきた命、自然、産業、文化を守り、次へつなぐ。そして地域の課題から目をそらさず、未来を見ながら行動する。
その姿勢は、ZEROSPHEREが大切にしている「地域にあるものを見つめ直し、新しい形で未来へつなぐ」という考え方とも重なります。
地域づくりは、派手なイベントだけでできるものではありません。
日々、人と人をつなぎ、話を聞き、準備をし、活動を支える。その積み重ねがあって、地域は少しずつ前へ進みます。
シルミルのむらは、野村地区にある豊富なマンパワーを引き出し、「個人の頑張り」を「地域の力」へ変えていく存在です。
次回は、その活動の一つである、7月30日開催の地域食堂「おかえり食堂」を紹介します。
子どもも、大人も、みんなで食卓を囲む。
その取り組みの中にも、シルミルのむらが目指す地域づくりの形が表れています。
ZEROSPHERE/ゼロの番人