くくりわな設置のコツ ― イノシシの通り道を「点」で狙う
「面」ではなく「点」で狙える罠
くくりわなの一番の強みは、イノシシが出そうな場所にピンポイントで仕掛けられることです。箱わなのように大きな設備を運び込む必要がなく、獣道のたった一点に金属のワイヤーを仕込むだけ。だからこそ、「どこに仕掛けるか」を見抜く目が、そのまま獲れる・獲れないを分けます。
今回は、痕跡の探し方から根付(ねづけ)の選び方、設置のコツまで、順を追って書いていきます。
まずは痕跡を探す

最初にやるのは、イノシシが「今」通っている道を見つけること。
道沿いを歩いていると、林の中には獣道(けものみち)、舗装路には足跡が見つかります。獣道を見分けられるようになると、最近通った道か、もう使われていない過去の道かが、だんだん分かるようになってきます。踏み跡が新しく、草が寝ていて、土がやわらかく崩れている道は「最近の道」。落ち葉が積もって草が立ち直っている道は「古い道」です。
もちろん、狙うのは最近通った道です。
「確実に通っている」サインを読む

狙いを定めた獣道を、さらに詳しく調べます。ここで見てほしいのが、木や竹に体をこすりつけた跡。イノシシは通り道の決まった木や竹に体をこすりつけるので、樹皮がはげて泥がついていたり、地面から数十cmの高さがテカテカ光っていたりします。こうなると、確実にそこを通っている証拠です。
あわせて探したいのが蒐場(ぬた場)。イノシシが泥浴びをする水たまりで、体の虫を落としたり体温を下げたりする「遊び場」です。ぬた場の近くには必ずと言っていいほど、体こすりの跡がある木があります。
イノシシは、ある程度の期間は同じ道を通ると言われています。だからこそ、今使っている道を一つ見つければ、そこは何日も狙える「一等地」になるわけです。
根付になる木を選ぶ
通り道が決まったら、次はくくりわなの根付(ワイヤーを固定する支点)になる木を探します。かかったイノシシやシカが全力で暴れても、耐えられる場所でなければいけません。選ぶ基準は3つ。
- イノシシ・シカの力に耐えられる強度があること(細い若木や枯れ木はNG。根の張った生木を選ぶ)
- 抜けない・切れない場所であること(根元にしっかりくくる)
- 獣が暴れても周囲の木に絡まりすぎない位置であること(ワイヤーが巻き付いて締め殺しにならない、回収しやすい向きを意識する)
この3つを満たす木が見つかれば、いよいよ設置です。
設置のひと工夫 ―「乗り越えさせる」

地面を少し掘って、くくりわなを埋め込みます。ここで一つ、かかる確率を上げるコツがあります。
罠を仕掛けた真上あたりに、乗り越えられる程度の障害物(木の枝や倒木など)を置いておくこと。イノシシがその障害物を乗り越えて足を下ろした瞬間、ちょうど踏み板を踏み抜き、くくりわなにかかる可能性が高まります。歩幅と着地点をこちらで誘導してやる、という考え方です。
「におい」との戦い ― だから雨の日
ここが、くくりわなの一番むずかしいところ。イノシシはにおいに非常に敏感です。設置作業中についた人間のにおいが残っているうちは、警戒してなかなか近づいてくれません。仕掛けた初日にすぐかかることは、正直あまり多くありません。
そこで頼りになるのが雨です。雨が降ると人間のにおいが洗い流され、警戒が解けて罠にかかる確率がぐっと上がります。「設置した後にひと雨来ると期待できる」——これは覚えておいて損のない経験則です。手袋をする、長靴で踏み荒らさない、といったにおい対策を普段から意識しておくと、なお良いでしょう。
まとめ
くくりわなは、道具こそシンプルですが、イノシシの行動を読む力がそのまま結果に出る、奥の深い猟法です。

- 最近通った獣道を探す
- 体こすりの跡・ぬた場で「確実に通っている」ことを確かめる
- 強く・抜けず・絡まない根付の木を選ぶ
- 障害物で歩幅を誘導して設置する
- においを残さず、雨のあとに期待する
痕跡を読めるようになると、山の見え方が変わってきます。焦らず、一つひとつの道と向き合ってみてください。
ZEROSPHERE / ゼロの番人