記憶を、未来へ ― 野村の2つの自然災害伝承碑
「自然災害伝承碑」という地図記号
2019年(令和元年)、地図に新しい記号が加わりました。「自然災害伝承碑」です。過去の災害の教訓を後世に伝えるために建てられた碑を示す記号で、国土地理院の地図に載るようになりました。
その伝承碑が、野村には2つあります。どちらも、平成30年7月の西日本豪雨——このまちを襲った、あの災害の記憶を刻んでいます。
一つ目 ― どすこいパーク 防災広場
一つ目は、どすこいパーク 防災広場にあります。
この一帯は、まちの中でも浸水がもっとも高かった場所です。碑には、災害の記憶を風化させてはいけないという願いが込められています。防災の意識をもち、後世へと語り継ぎ、いつ起こるか分からない災害に備える——その大切さが、静かに刻まれています。
そして毎年7月7日には、この災害で亡くなられた方々の御霊を偲び、献花が行われています。白い花に囲まれた碑の前で、まちの人々が静かに手を合わせます。
二つ目 ― 三嶋神社
二つ目は、三嶋神社にあります。
三嶋神社もまた、肱川(宇和川)のほとりにあり、大きな被害を受けました。社殿は本殿の床上まで水に浸かり、社務所は流失。氏子の方々の家々も、七百戸近くが浸水したと碑に記されています。復旧には多くの費用と時間がかかると思われていました。
そんな中、地元の医師である宇都宮大朗(うつのみや たいろう)氏の多大なご支援により、神社は再興されました。「心のよりどころ」である氏神様の悲惨な姿に心を痛め、自ら再建に力を尽くされたと伝わります。その篤志は、碑にしっかりと顕彰されています。
この碑は、西日本豪雨の記録と、三嶋神社再建の記録を、あわせて刻んだものです。悲しみの記憶と、それでも立ち上がった人々の歩み。その両方が、一つの石に残されています。
石に刻む、ということ
災害は、時とともに記憶が薄れていきます。だからこそ、石に刻んで残す。碑は、私たちに「忘れないで」「備えて」と静かに語りかけ続けます。
野村を訪れたら、どうかこの2つの碑の前に立ってみてください。手を合わせ、あの日に思いを馳せる。そして、いま生きる私たちが何をすべきかを、少し考える。それが、犠牲になられた方々への、いちばんの供養になるのだと思います。
ZEROSPHERE / ゼロの番人