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養蚕 / Hatch
2026.07.24 — 養蚕

桑を、切らさない ― 大きく育てる壮蚕の飼い方

以前、いちばん繊細な幼い日々=稚蚕飼育のことを書きました。今日は、その続き——壮蚕(そうさん)飼育の話です。

壮蚕って、いつのこと?

蚕は、脱皮をくり返しながら大きくなります。一般的には、1〜3齢を稚蚕、4〜5齢を壮蚕と呼びます。

ただ、西予市の養蚕では3齢から自分たちで飼うので、ここでは3〜5齢の話になります。稚蚕農家さんから元気な3齢蚕を受け取り、繭になる直前まで育て上げる——それが、私たちの壮蚕飼育です。

いちばん大事な、3つのこと

新鮮な桑を、十分に与える。蒸れさせない。蚕座(さんざ)を広く、清潔に保つ。

シンプルですが、これがなかなか奥深い。ひとつずつ見ていきます。

① 桑を、切らさない

まず、桑を絶対に切らさないこと。

驚く数字があります。蚕は一生のうちに、約20gの桑を食べます。そのうち——5齢のたった約1週間で、18g。つまり一生の食事の9割を、最後の一週間で食べるのです。

まさに「食べざかり」。この時期は、新鮮で成熟した桑を、食べ残しが大量に出ない程度に、たっぷり与え続けます。桑畑を切らさないことが、いい繭への第一歩。いい桑が、いい蚕をつくる——以前書いたこの言葉が、ここで効いてきます。

② 蚕座を広げる(拡座)

蚕が育つと、蚕の居場所(蚕座)が手狭になってきます。

密集すると、蒸れて、病気の原因に。だから、蚕同士が重ならないよう、成長に合わせてこまめに広げていきます。これを拡座(かくざ)といいます。ゆったりした住まいが、健康な蚕を育てるのです。

③ 高温多湿を、避ける

蚕は、蒸し暑さに弱い生きものです。

温度の目安は、4齢で25℃前後、5齢で23〜25℃程度。風を直接当てず、換気して湿気を逃がします。

正直に言うと、ここがいちばんの難所です。梅雨のじめじめと、夏の猛暑——この時期の温度・湿度管理は、本当に神経を使います。特に雨の日は要注意です。

④ 掃除は、こまめに(でも触りすぎない)

蚕の糞(蚕沙=さんさ)や、桑の食べ残しをためないこと。除沙網(じょさあみ)を使って、定期的に蚕座を清掃します。

ただし——触りすぎは禁物。頻繁にいじると、かえって蚕を傷めてしまいます。「清潔に、でもそっと」。この加減が、経験のいるところです。

⑤ 「眠」の蚕には、桑を控える

蚕は、脱皮の前に「眠(みん)」という、じっと動かない時期に入ります。

頭を上げて動かなくなった蚕が増えてきたら、桑を与えるのを控えます。むやみに与えても食べませんし、蚕座が汚れるだけ。脱皮がそろって、みんなが起き出して(起蚕=きさん)から、少量ずつ再開します。

眠に入る子と、まだ食べている子を、うまく分けてやるのも腕の見せどころ。石灰を使って桑を乾かし、消毒も兼ねる——といった昔ながらの工夫もあります。このグループ分けがいい繭をつくるポイントです。

⑥ 「熟蚕」を、見逃さない

そして、いよいよ最後。

5齢の後半になると、体が透き通り、桑を食べなくなって、そわそわ歩き回る蚕が出てきます。これが熟蚕(じゅくさん)——「もう繭を作りたい」という合図です。

このサインを見逃すと大変。蚕座の上で糸を吐き始めてしまい、繭の質が落ちてしまいます。この合図を捉えて、次の上蔟(じょうぞく)へと進むのです。

手をかけた分だけ、いい繭に

桑を切らさず、広げて、蒸らさず、清潔に。そして、眠と熟蚕のサインを見逃さない。

派手さはありませんが、この世話が、繭の質を決めます。食べざかりの蚕たちが、もりもりと桑を食む音(まるで雨のようなんです)を聞きながら——私たちは、繭になるその日を待つのです。

ZEROSPHERE / ゼロの番人

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